2024年前期連続テレビ小説:朝ドラ「虎に翼」に登場する
現在の司法試験の前身である、高等文官試験司法科とその難易度を紹介します。
実際に主人公の猪爪寅子は、高等試験司法科を受験し初回は不合格・・
その後、大学卒業し、雲野法律事務所で働きながら勉強し、
合格率5%の難関突破し合格ます。
昼休みに花岡と会うことがささやかな寅子であったことも支えになったのでしょう。
ちなみに、佐田優三は案の定、不合格となります。
今回は、朝ドラ「虎に翼」で猪爪寅子が合格した高等試験とは何か、
高等試験司法科試験とその難易度を紹介します。
また、寅子以外の明律大学法学部の学友である香淑、桜川涼子、梅子、中山、久保田、山田よね、花岡、轟、稲垣についていも高等試験についてネタバレで、紹介します。
それではみていきましょう!
高等試験司法科試験とは?虎に翼で寅子が合格した難易度は?
戦前の日本では、現在の司法試験の前身となる「高等試験」が行われていました。
この試験は、1894年から1948年まで実施された高級官僚の採用試験で、
1918年の高等試験令以後の正式名称は「高等試験」、高等試験令施行前の正式名称は「文官高等試験」でした。
高等試験は、行政官の採用試験であり、
外交官の採用については「外交官及領事官試験」、
司法官の採用については「判事検事登用試験」が行われていました。
しかし、1918年の高等試験令により、これらの試験はそれぞれ
- 高等試験行政科
- 高等試験外交科
- 高等試験司法科
へと引き継がれました。
高等試験司法科の筆記試験と口述試験
高等試験司法科は筆記試験と口述試験がありました。
筆記試験
必須科目として憲法、民法、商法、刑法、民事訴訟法または刑事訴訟法から事前に1種を選択する形式が取られていました。
また、選択科目として哲学概論、倫理学、論理学、心理学、社会学、国史、国文および漢文、行政法、破産法、国際公法、民事訴訟法または刑事訴訟法(必須科目で選択しないもの)、国際私法、経済学、社会政策、刑事政策などがあり、事前に2科目を選択する形式が取られていました。
これを7日間かけて受験しました。
口述試験
筆記試験をパスすると次は口述試験です。
口述試験では、試験官が受験者に対して特定の専門知識に関して、様々な質問をいくつもぶつけてその場での回答が求められます。
また、口述試験では、試験の対象範囲に関わる専門知識、実践的なケース課題への対応、課題解決のためのコミュニケーションなどが評価されました。
高等試験司法科の難易度は?合格率5%
戦前の高等試験は非常に難関な試験で、合格率は5パーセントに限られていました。
具体的な年別の合格者数を見ると、1906年までは平均48名、1917年には124名、その後は概ね200名台を上下し、1929年には336名を数えたとされています。
ドラマと同じ、昭和13年の場合、2,900人出願、242人合格、倍率は12倍を超えました。
このように、合格者数は年によって変動していましたが、全体としては非常に厳しい試験であったことがわかります。
また、当時の大学進学率も10パーセント足らずで、旧制高等学校や大学への進学率にいたっては数パーセントにすぎなかったといわれています。これらの事から、高等試験の合格は非常に難易度が高いものであったと考えられます。
猪爪寅子のモデル三淵嘉子(みぶちよしこ)さんが合格した時の人数は?
1938年(昭和13年)11月1日、猪爪寅子のモデルになった三淵嘉子さんは、高等文官試験司法科に合格します。
その時の合格者は242人で、そのうち、中田正子さん、久米愛さんを含め、女性はわずか3名という狭き門でした。
合格率も10パーセント以下と言われていました。
高等試験司法科試験は現在の司法試験と比較して、何がちがう?
戦前の法曹教育と現在の司法試験は、いくつかの重要な点で異なります。
- 試験の形式: 戦前の法曹教育では、「高等試験」が行われており、その一部として「判事検事登用試験」が存在しました。これに対して、現在の司法試験は、4日間で行われる1度の試験で合否が決まる仕組みとなっています。
- 試験の内容: 戦前の「判事検事登用試験」では、第一回試験と第二回試験があり、第一回試験に合格した者は試補として裁判所や検事局で実務の修習を行い、その後第二回試験に合格すれば司法官に任命されることができました。現在の司法試験では、法科大学院の教育を踏まえたものとし、司法修習を経れば、法曹としての活動を始めることができる程度の能力を備えているかどうかを判定するものとなっています。
- 資格取得の方法: 戦前の法曹教育では、帝国大学法科大学卒業生や司法官試補の資格を持つ者に対しては無試験で弁護士資格が与えられていました。現在の司法試験では、法科大学院で受験資格を得るか予備試験に合格の上、司法試験に合格した者だけが弁護士資格を取得できます。最終学歴や年齢に関係なく受験できます。
このように、戦前の法曹教育と現在の司法試験は、試験の形式、内容、資格取得の方法など、多くの面で異なります。
帝大特権(東大)の判事検事登用試験が「高等試験司法科」へ
「判事検事登用試験」は、1891年から1922年まで行われていた司法官任用のための試験で、行政官任用のための「文官高等試験」に対し、外交官と司法官については別試験体系がとられていました。
判事・検事の任用については、判事検事登用試験合格者の他、3年以上帝国大学法科大学教授または弁護士であった者からも任用可能でありました。
しかし、1923年(大正12年)以降、高等試験司法科として、行政官・外交官の任用試験に統一されると共に、弁護士試験と判事検事登用試験が統一されることにより法曹資格の一元化が図られました。
これにより、帝国大学法科大学卒業生や司法官試補の資格を持つ者に対して無試験で弁護士資格が与えられていた制度(いわゆる帝大特権)は廃止され、全ての法曹資格取得者が同一の試験を受けることとなりました。
この改革により、法曹資格の取得が一元化され、公平性が向上したと言えます。また、これにより司法試験の難易度が上がり、より優秀な人材が法曹界に集まるようになりました。
この制度改革は、現在の司法試験制度の基礎を作り上げる重要な一歩となりました。
戦前の法曹界における弁護士として活動は・・・
高等試験司法科試験に合格した後についてみてみましょう。
合格後は、1年半弁護士試補として修習を受けたのち、弁護士登録される仕組みになっていました。
戦前の日本では、弁護士という職業は、現在とは異なる社会的地位と役割を持っていました。
- 社会的地位: 戦前の弁護士は、裁判官や検察官よりも一段も二段も下に見られていたとされています。また、弁護士の仕事の大半は統制法違反事件や国家総動員法違反事件であり、民事事件は政府の動向などから激減し、食料事情もあって田舎へ転居した弁護士もいたとされています。
- 活動の内容: 弁護士は、現在のように一定の信頼が置かれる立場ではなく、平気でずるいことをする者、暴利をむさぼる者などが存在していました。しかし、1893年に弁護士法が施行されて以降は、「弁護士」の呼び名が一般的になり、その資格にふさわしい知識を持つ者の選抜をするための試験制度も整備されました。
弁護士になれたとしても地獄の道を歩んでいたのですね。
そんな高等試験司法科が、朝ドラ「虎に翼」でどのように登場するか紹介します。
朝ドラ「虎に翼」の高等試験司法科をネタバレ
朝ドラ「虎に翼」の高等試験司法科に挑む明律大学の学友たち
ドラマでは、どのように高等試験司法科試験に立ち向かったか紹介します。
1937年(昭和12年)猪爪寅子が初受験
1937年(昭和12年)、法学部最終学年の猪爪寅子が高等試験を受けますが、筆記試験で不合格になります。
佐田優三も案の定、不合格になります。
久保田、花岡、稲垣は筆記試験をパスしました。
その後、口述試験で、久保田が不合格、花岡と稲垣は合格します。
ちなみに、史実では中田正子さんが筆記試験合格、口述試験で不合格になりますが、女性だったから落とされたのではと言われています。
翌年の高等試験司法科について
明律大学を卒業して雲野六郎事務所で勤務する寅子が再び、高等試験に挑みます・・が・・
女子部からの学友が以下の理由で受験を断念します。
- 香淑:兄の思想犯疑いと日中戦争の影響もあり日本での勉学が難しいと祖国に帰国し受験不可能に
- 桜川涼子:父親が芸者と駆け落ちし、桜川家を守るため婚約し受験を断念
- 梅子:夫から離婚届をだされ、光三郎と共に家を去り受験を断念
この状況において、筆記試験を受験、寅子、佐田優三、山田よね、轟、中山がパスします。
ちなみに、筆記試験会場は東京都港区にある
港区立郷土歴史館で撮影されました。
口述試験日前日に生理・月経が・・寅子ピンチに・・
筆記試験はパスした寅子にアクシデントが・・
口述試験日前日に、寅子にお月のものが・・・やばい・・・
お月のものが来ると4日間も体がしんどくなる寅子は、そのまま
口述試験に挑み・・・結果合格します。久保田、中山、轟も合格します。
だが・・佐田優三、山田よねは不合格に・・・
佐田優三は、次回の受験して不合格なら法曹をあきらめる宣言をします。
合格した寅子は、ヨイショするマスコミに
「女は弁護士になれても、裁判官や検事になれない、女はできないことばかり・・」
とぶっちゃけます。それが、地獄の道への決意となりました。
ドラマは高等試験の受験法という書籍を参考に再現
ドラマの高等試験は、昭和17年に発行された高等試験の受験法を元にドラマ化しました。
この書籍によると試験会場は旧議事堂(国会)でした。(ドラマでは司法省が会場でした。)
会場には出店もでており、牛乳やパンやお寿司などがありました。
また、この書籍にはすでに戦時中ということもあり、
「出征兵士の如き氣持で」
「戦いの火蓋は切られるのである」
と書かれていました。
虎に翼で寅子らが合格した高等試験司法科とは?難易度は?まとめ
2024年前期連続テレビ小説:朝ドラ「虎に翼」に登場する
現在の司法試験の前身である、高等試験司法科試験とその難易度を紹介しました。
最後までお読みいただき誠にありがとうございました。